[movie][camera] 『キャロル』に出てきたカメラ
ちょっと脇に逸れますが。 『キャロル』でルーニー・マーラが演じているテレーズは、デパートに勤めつつも、密かに写真家に憧れている、という女性で、彼女が自分のカメラで撮影したキャロルの写真は作品全体の中でも重要なモチーフになっているわけですが、ちらっと映るそのカメラが、ルーニー・マーラの手に中にあるせいなのか、何とも魅力的です。
ということで、ちょっと調べてみました。
まず、最初からテレーズが使っているカメラ。
これは、1939年にArgus社から発売された同社Cシリーズの3モデル目で、比較的安価だったことと「レンガ(Brick)」の愛称の元となったそのデザインによって人気を博し、27年にわたるロングセラーとなったものです。映画の舞台が1950年代なので、当時はまだ現役のモデルです。当然ながら完全にマニュアルで、劇中でのテレーズの取り回しもなかなかぎこちない感じだったのが印象的ですが、実はこのカメラの後期のバージョン違いが、ハリー・ポッター・シリーズにも出ていたりします。
ちなみに今買おうとするとヤフオクとかでは3000円から5000円といった辺りで出品されているようです。(eBayも同じくらい)
安価モデルというだけあって扱いはややこしそうなのであまりお勧めはしませんが、個人的にはちょっと欲しい気もします。何の話だ。
で、さらに、キャロルからテレーズへのクリスマスプレゼントとして贈られるのが、キヤノンIIIaです。こちらは1951年の12月に発売されたモデルで、舞台となっている1952年時点ではキヤノンのフラッグシップ機でした。
こちらは今買おうとすると状態によってピンキリで1万円から7万円といったところでしょうか。ヤフオクではあまり出品がありません。
ちょうどこの頃、日本のカメラメーカーも徐々に足場が固まってきて、世界に打って出始めた時期なのですが、この後、ライカから当時としては決定的な競争力を持ったライカM3が登場し、本格的な開発競争が始まっていくことになります。
まぁ本当に、だからどうした、という感はあるわけですが、テレーズが永遠に残すことを願ったそのひとつひとつの瞬間を実際にフィルムに焼き付けた機械と同じものが今現在でも入手可能であり、当時と変わらぬ動作をする、ということには、実に魅力的な不思議さがあるような気がします。同じものを持って、同じような思いを胸に、同じように何かを願ってファインダーを覗いてみる、というのも、映画のひとつの楽しみ方なのではないか、と無理やりまとめつつ、eBayの出品をひとつひとつチェックしているところです。